きっと上手くいく
しばらくの間はどこにも動かないだろうと見て
俺はブランコから降り
来る途中で見かけた自動販売機に小銭を落とす。
凛とした冬の空気に
ガシャリと落ちるコーヒーの音が響いた。
手に持ってるだけでも温かい。
俺はブランコに戻り
デブに茶色いロング缶を渡すと
「僕はブラックがいい」
泣きはらした目をして見上げ訴える。
ちょっと怖っ。
俺は自分で飲もうと思っていたブラック缶をヤツに渡し、自分は超甘いロング缶のプルタブを開けた。
口の中に甘みが広がり、飲み込むのに時間がかかる。
デブの復讐。
甘党のお前はいつもこっちだろーが!
人がブラックしか飲めないのを知っていて……まぁいっか。
今日は全て許してあげよう……って気持ちになるのはナゼだろう。
さて
何て言葉をかけたらいいかと迷っていると
「千尋ちゃんのお腹の子供は、僕の子なんですよね」
復讐に次ぐ逆襲。
でもその声に刺はなく
静かな穏やかな声だった。
「だと思う」
「じゃぁ僕と結婚した方がいいと思います。たった一度だけだけど、その一度で神様が授けてくれた大切な命ですから」
一度きりだったのか?
何度もヤッてたわけじゃないのか
デブの切実なる告白だけど、俺の心は軽くなる。
「本当の親と一緒にいるべきです」
「まぁな」
軽く返事をして空を見上げた。
初雪が降りて来た。