きっと上手くいく
理想

 人に優しく
真面目に生活していれば
人生に問題はない。

父の教えだった。

中学校で校長先生と呼ばれた父は、真面目で穏やかな人だった。

母も教師であり
職場で知り合い二人は恋に落ちて結婚し
兄が生まれて
僕が生まれた。

「健ちゃんも職場でいい出会いがあればいいわね」
家族で朝食を囲み母が言う。

「母さん。変な期待するよりお見合い話でも持ってきたら?」
笑いながら2つ違いの兄が言う。
一流と言える企業に勤めた兄は、昔から僕をバカにする。

『根底には愛がある』そんな言い訳をしながら、僕をいつもいじっていた。

兄は両親のいい所を授かった。

長身で肩幅があり
すっと形の良い鼻は父親似で
二重の優しそうな目と色気のある薄めの唇は母親似だった。

僕も長身で肩幅はあるけれど
小さな団子系の鼻は母親に似て
糸のような細い目とぼったりした厚めの唇は父親に似た。
ついでに近眼
ついでに父方の叔父に似て太っていた。

つまり
兄はイケていて
僕はイケてない。

顔なんて二の次
男は優しさと真面目さと仕事のデキ具合。
心が広くて頼りがいがあればもっといい。
公務員ならもっといい。

そう思ってきたけど

現実は顔だった。

誰だって
僕と兄なら兄を選ぶだろう。
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