きっと上手くいく


大学を出て
公務員試験に受かり
区役所に勤める。

『石橋君は……ほら、あの……秋葉原辺りでリュック背負って歩いてる子に似てるね』
課の歓迎会で
僕とコミュニケーションをとるつもりだった課長は、完璧に地雷を踏んでしまった。

『フィギュアとか詳しそう』

『やっぱオタクかぁ』

僕の返事も待たず
みんな同調していた。
こっそり憧れていた同僚もクスクス笑ってる。

僕は顔を真っ赤にして下を向く。
そんな外見なのだろう。

せめて本当のオタクなら
色んな知識もあるのに残念だ。

でも嫌われてるワケじゃないらしい

上司とも同僚とも仲が良い
残業もするし
人が嫌がる仕事もする

誠実に丁寧に。

『石橋君はおススメだよ』
若い女の子に課長は言うけど
女の子達は笑うだけで返事はない。
いつもそうだから
期待はしない。

期待してダメになった時が悲しいから
最初から期待してはいけない。
僕はもう
ずーっと前からそれを理解している。

『いい人だけど恋愛対象にはならない。石橋さんと男と女の関係にはなれない』

女の子達は揃ってそう言う。

【いい人】って言われるだけで幸せだろう。

『男は顔じゃないよ。心だよ』
そう言ってくれた同期の女の子は、総務課の生田斗真に似た男性と来年結婚するらしい。

人は外見だよね。

もう慣れたはずなのに
たまに心臓が痛くなるのはなぜだろう。

きっと太ってるから。





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