きっと上手くいく
関係
日が短くなってきた。
子供の頃
夕焼けが怖かった。
地元は田舎で畑が広がり
遠くに見える山が茜色に染まる。
全てが飲み込まれるようで怖かった。
『綺麗な景色だね』って母親は言うけれど、俺は母親のエプロンの裾をギュッとつかむ。
自分も母親ごと夕焼けに飲みこまれるようで怖かった。
『どうしたの?』
優しく頭を撫でる手に甘えて目を閉じた俺。
『大丈夫よ。お母さんが守ってあげるね。悪い人から守ってあげる』
笑ってそう言ってた母親。
母は悪い人から俺を守ったけど
自分を守れなかった。
【今月分振込完了】
味もそっけもないメールを母親に打ち込む。
【ありがとう。感謝観劇梨汁ぶしゃー】
返事がすぐ来た。
イラっとくるのは
変換ミスのせいか
笑いをとろうとする姿勢なのかわからない。
給料日
七桁の職場からの入金を確認し
七桁の送金を実家に送る。
俺の家はごくごくふつーの家だった。
でも俺が大学二年の時
父親が
顔も知らない親戚の保証人になり
生活が一転した。
弟は大学をあきらめ就職し
俺は大学を中退させられた。
『あと一年なら頑張れるけど、あと二年あるから頑張れない。お兄ちゃんが学費を払ってくれるなら続けていいよ』そう言われて……大学を中退した。