きっと上手くいく
「ごめんね」
ベッドの中で青白い顔で謝る千尋。
「いいって、風邪とかじゃないのか?本当にただのつわりってヤツ?」
つわりがどんなもんだかわからないから、病気だったらどうしようって心配になる俺。
「熱も咳もないの。ただ調子が悪くて吐き気がするだけ」
「病院行く?連れてくぞ」
「すぐ治るから大丈夫」
「ホントに?」
「心配性だなぁ」
ドーンと構える姿が頼もしいわ。
「土鍋でおかゆ作ってやるよ。あと桃の缶詰買ってきた。ポカリもアイスもオレンジもある」
千尋の頭を撫でてから
俺は彼女から離れて狭いキッチンに立つ。
しばらく休戦になりそうだ。
そう思うと頬が緩む。
千尋の『出て行って』宣言を受けたけど、ダラダラと俺はこの家に居座っていた。
あのデブが入り込むのは許せない。
千尋は自分ひとりの問題だからと言うけれど、俺が出て行った隙にあのデブがどう動くか……デブだから身体は回らないけど頭は回るだろう。千尋が丸め込まれたら終わりだ。
土鍋を取り出してから
「今月分の家賃、生活費の財布に入れとくから」寝室の扉を少し開き千尋にそっと言うと
「無理しなくていいよ」って返事をされた。
「丸ごと送金してないから大丈夫。それに……もう送金しない事に決めた」
「それはダメだよ。お母さんとお父さんが困るでしょう。和也のお金がないと生活できないよ」
真剣に言われたけど俺は無視。
大丈夫だ
生活できなくてもヨーロッパは行けるんだから。
もう俺は家族を持つんだ
転職しなきゃな。