きっと上手くいく
光彩

いじめられっ子だったから
突き飛ばされるのは慣れてたけど
自分から他人を突き飛ばしたのは初めての経験だった。

不思議な気分だった。

そういえば
いつも僕をいじめていたタイプは、彼に似ていた。

細くて顔が良くて背が高くて
自信満々なタイプで『待てよデブ』って僕を追いこみ、軽い暴力をふるってたっけ。

どうして僕は彼らにいじめられていたんだろう。

太ってるから?
ノリが悪いから?
面白くないから?
何か言われたら理屈っぽく言い返していたから?

それだね。
反論もできないくらいの正論を言うと、顔を引きつらせて余計に僕を殴ってたっけ。



僕は彼に
笑われて悔しかったんじゃない。

自分の不甲斐なさが悔しかったんだ。

彼の言う通りだった。

僕は女の子とつき合った経験がない。
女の子が弱ったら
何を欲しがるかわからない。
看病の経験なんてない。

ただ僕は
千尋ちゃんが心配で
元気になってほしくて

自分の好きな物を差し入れに買ったんだ。

身体の調子が悪いんだから、炭酸は無理だよね。
バナナも喉が詰まるし
ポテチなんてもってのほか

土鍋からおかゆ……土鍋で作れるんだ。
おかゆって炊飯器じゃないんだ。

神様は不公平だ

彼は顔も良くて
料理もできて
女の子の心を知り尽くしてる。
女の子に慣れている。

どうして千尋ちゃんなんだろう。

他の女の子の元に行ってほしい。



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