きっと上手くいく

僕はその場にずっと立ち止まり
お弁当屋さんの入口を見つめていた。

逃げ出したい気持ちと
千尋ちゃんに会いたい気持ち
心の中で大きな鉛の玉がゴロゴロ動いているようで、とても重い気分だった。

優柔不断な性格が僕をその場に佇ませ
彼女は『お先に失礼しまーす』って笑顔を見せながら挨拶をして、お店から出て来る。

「待っててくれてありがとう」

肩にかからないふんわりした髪を揺らがせ
千尋ちゃんが僕の隣に並ぶ。

小柄な彼女は僕の後ろにすっぽり隠れるだろう。
膝までのフレアスカートとオレンジ色したカーディガン
ペッタンコ靴がよく似合う。
お腹もゼンゼン出てなくて妊婦には見えない。

化粧も薄く自然体で
明るくて笑顔が可愛くて
表情が豊かで
優しくて

困ったね。
僕はやっぱり
千尋ちゃんに夢中だ。

「身体は大丈夫なの?」

「うん。朝になったらすっかり元気。でもお惣菜の匂いがダメでお店でマスクしてる。お店の衛生にもいいかもね」

「無理しないでね」

「ありがとう。健ちゃんは優しいね」
しみじみ言ってくれたけど
僕は返事ができなかった。

優しいだけじゃ

ダメだよ。



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