きっと上手くいく

「あ?夕飯前に食事?どこまで食うんだよ、同じ職場の子かい?カワイイね」
兄は周りに聞こえるような声を出し、千尋ちゃんに声をかける。

一番会いたくない人に会ってしまった。

「職場で迷惑してない?こいつ太ってるから暑苦しいでしょ。俺こいつの兄貴。いやホント可愛いわ」

千尋ちゃんは僕の兄と知り
さっきみたいに
また深々と頭を下げた。

「兄貴こそ、らしくない場所にいるね」
ボソッと言ったら

「残業前に腹ごしらえ。定時に終わるお前たちとは違う」

その言い方が
昨日のホストみたいでカチンとくる。
僕達だって忙しい時は定時で終わらないし、残業代も出ないのに。

「お兄さんですか?いつも健ちゃんにお世話になってます」
千尋ちゃんは笑顔を見せ
兄は彼女の可愛い口から『健ちゃん』という言葉が出て驚いていた。

「健ちゃんは思いやりがあって優しくて、人の心のわかる素敵な人です。お兄さんより何倍もいいオトコですよ」
サラッと言い切り「健ちゃん行こう」って僕の手を引っ張る。
僕はそのまま彼女に付いて行き
兄は最初に会った時よりもっと驚いた顔をして、僕達の背中を見ていて

僕は

ちょっと爽快気分だった。

いや
かなり爽快だった。


あの兄にあんな顔をさせるなんて

「千尋ちゃんってすごいよね」
アイスコーヒーを飲みながら僕が言うと

「食欲が?」
レタスをはみださせて言う彼女がとっても愛しい。
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