きっと上手くいく
山岸さんが教えてくれたのは
千尋ちゃんの家はここから一時間ほど離れた場所。
お母さんとお父さんと中学生になった妹さんがいて
お父さんとは血が繋がってない話。
「お母さんから送ってきた荷物は開けた?」
「……開けてない……」
「てっ……手伝おうか?」
勇気を出して言ったけど「いい」って即答されてしまった。
店の温度が1℃下がる。
周りの音がクリアになり
自分の心音までも聞こえそう。
僕と千尋ちゃんは何も語らず
見えない壁が間に入る。
遮断された気持ち。
そんなの
子供の頃から慣れていて
いつもなら気にならないのだけど
僕は千尋ちゃんの笑顔を見すぎていて
柔らかい肌も唇も忘れられなくて
僕は千尋ちゃんが
好きで好きでたまらなくて
この遮断された世界が悲しくて
泣きたくなってしまう。
うつむいて肩を震わせてたら
「ありがちな話だよ」って
千尋ちゃんは僕にゆっくり話しかけてくれた。