きっと上手くいく
「わかってる。すごく身勝手でワガママな考えだよね」
千尋ちゃんは
大好きなお母さんとも
再婚相手のお父さんとも距離が出た。
「自分が子供だった。今でも子供だけど……私があまりにも死んだお父さんが大好きでお母さんが大好きだったから。せめて再婚がもっと早いか、もっと遅かったら、自分も違ったと思う」
あまりにも
平々凡々の生活をしている僕は、ハンカチで汗を拭きながら「うん」としか言えない。
「お母さんが、お母さんじゃなくて……女だったのが悲しかった。きっと再婚相手に嫉妬してたんだ。寂しかったんだ」
ボソッと言ってから
大きく伸びをしてグラスの水を飲む千尋ちゃん。
いつもの明るくて元気な千尋ちゃんじゃない
寂しがり屋の女の子が目の前にいる。
「でもね」
静まる僕の顔を見て心配そうに
彼女の声のトーンが上がった。
「私が中学生の時に妹が産まれてね。もう、すんごく可愛いの」
妹に対しては嫌悪感はなく
それより保護意識が強く出たらしい。
「妹と離れるのが一番つらかったよ」
年の離れた妹も千尋ちゃんが大好きで
今でも仲良し。
「妹には幸せになって欲しいんだ。
『変な男に引っ掛からないように、エッチは高校卒業してからだよ』って何度もしつこく言い聞かせてる」
「そうなの?」
「うん」
「千尋ちゃんもそんな真面目な女の子だったの?」
「まさか」
驚いてからの笑顔が可愛かった。
「自分が早かったから余計にね。エッチは大人になってからの方が楽しいって理解した。子供の頃にヤッてもそんなに楽しくなかったもの。自分の反省をふまえて妹には大切にしてほしいんだ。私が言っても説得力ない?」
「うん」
「返事が早ぎる」
そうだね。ごめん。