きっと上手くいく
「高校卒業してからの専門学校は、家から通えたけど親には『家を出たい』ってお願いした。義理のお父さんは最初反対したけど許してくれた」
「千尋ちゃんには家に居て欲しかったと思う」
「そうかもね。でも……私の居場所はもう無いって思ったよ。あそこはお母さんと義理のお父さんと妹の場所」
『そうじゃない』って言いたいけど
なぜか口から出なかった。
ほどほど大人になった今
千尋ちゃんの気持ちもわかるし
お母さんの気持ちも
再婚相手の気持ちもわかる。
誰も悪くないのに……。
「義理のお父さんって人が不動産業やっていて、私の住んでるアパートもお父さんが所有していて『せめてこれだけはさせて欲しい』ってさ、家賃と水道光熱費はあっち持ちなの。だからバイト生活でも優雅に……優雅じゃないか、まあほどほどに暮らせてるんだ」
義理の娘に何かしてあげたい
そう思ったのかな。
「健ちゃん。呆れちゃうよね」
「え?いや……そんな」
「親に反抗して家を出て、妊娠してるのに家に黙ってるって」
「人それぞれに事情もあるから」
「私は甘えてる。健ちゃんにも和也にもお母さんにも再婚相手のお父さんにも」
深いため息をして
千尋ちゃんは窓の外の景色を見つめる。
ジッと一点を見つめてる姿を見て
僕は
もしかしたら……って、ふと思った。
「和也が怒るから帰ろうか」
「千尋ちゃん?」
「なに?」
「もしかしたら千尋ちゃんはわかってるんじゃない?
お腹の中の子が
僕か山岸さんか……どっちの子か」
突然の質問に
千尋ちゃんはうろたえず
「……うん」
小さく返事をした。