きっと上手くいく
「あの……山岸さん。これなんてどうでしょう」
目の前にいる男を押しのけ
後ろにいたおばさんが一枚の紙を、俺と仏頂面担当者の間に落した。
こんな求人あったっけ?
「さっき入ったんだけど、清水君が勧めないから……」
「あ、そういえばありましたね」
テメーいい加減にしろよ!
嫌味でも言ってやろうかと思ったけど
その求人を見て何も言えなくなる。
いいじゃん……ここ。
家から地下鉄一本で通える場所。
けっこう名前を聞く
大きな医療機器会社。
まともな時間のまともな仕事。
仮採用は三ヶ月。
それから本採用。
給料もいいじゃん。
好条件。
電話して面接。
「たまーにあるのよね好条件のが。ハードル高いかもしれないけど、営業を募集してるので山岸さんなら大丈夫だと思いますよ。早い者勝ちです。すぐ連絡しましょう」
「お願いします」
迷ってる暇はない。
教えてくれたおばさんが担当者の肩を叩き、俺の目の前に座ってもう一度色々と確認。
千尋にいい話を持って帰れる。
最近元気がない。
『デブが来ないから?』って聞きたいけど、プライドが邪魔をする。
あ、LINE入った。
担当のおばさんがコピーなどしてる間、こっそりスマホを覗くと千尋からだった。
『今日、大事な話があるの』と……。
だから
『俺も』って一行書き込み、笑顔で戻ったおばさんとまた話を続ける。
早く家に戻って
千尋に報告したかった。