きっと上手くいく
「カン違いしてんじゃねーよ。千尋は俺の女」
丸い背中に凄んで言うと
マトリョーシカは顔を真っ赤にして俺をにらみつけた。
「ホストが何を言ってんだ。
家賃も入れず、女と遊び、千尋ちゃんを泣かせてきて何が『俺の女』だ!このヒモ野郎」
「黙れデブ!」
「千尋ちゃん泣いてたぞ。お弁当屋の裏で泣いてたぞ!」
「チェックしてんじゃねーよ!このストーカーが」
「ぼっ……僕はストーカーじゃない」
互いの怒りがMAX沸点になる寸前
「胎教に悪いから止めて」
うんざり声で千尋が言い
胎教という言葉に俺達は黙り込む。
俺は目線を千尋の下腹部に移した
このお腹の中に
俺の子供がいるのか?
千尋の口から出た【胎教】なんて言葉は、今の今まで自分には関係ないワードだったのに。
「ごめんね千尋ちゃん」
デブはしんみりと謝り
千尋の隣に移動して
今度は俺に土下座した。
おい!何だよ今度は土下座って!
「山岸さん。彼女を譲って下さい」
丸い背中をもっと丸くし
デブは俺に懇願する。
「一緒に住んでるのは聞きました。
彼女と長いのも知ってます。
でも、僕は心から彼女を愛してます。
千尋ちゃんを大切にします。
お腹の中の子は僕の子です。違っても僕の子です。
彼女と別れて下さい」
きっと
下げた顔は泣きそうな顔をしてるんだろう。
でも俺は
『はい。そーします』なんて言わねーよ。