きっと上手くいく
「おかえりなさい」
彼女の少しだけ強張った声が気にならないほど、俺は浮かれていた。
「今日デブ来る?」
ジャケットを脱いで小さなケーキの箱と、カラフルな色で揃えたガーベラの小さな花束を千尋に渡す。
「きれいだね」
幸せそうに千尋は言う。
花とケーキって最強だな。
すぐ明日の面接の話をしたけど
千尋も話があるってLINEで書いてたっけ。
「話……あるんだよね」
さりげなく聞くと
「うん。ちょっと座っていい?」
「いいよいいよ」
軽く返事をして冷蔵庫から缶ビールを取り出す俺。
水商売は10時出勤。
いつもなら飲まないけど
今日はいいだろう。
でもなぁ
せっかくデブが来るから
デブを追いだす為に10時出勤にしてるのに
ゼンゼン来ないから意味ないじゃん。
「今日はデブ来る?」
至福の一口を喉に流して千尋の向かいに座ると
千尋は首を横に振る。
来ないのか……。
「いやさぁ、俺、今日ね……ハローワーク行って」
「ごめんね和也」
千尋は俺の前で
大きな丸い目から涙をポロポロ流していた。