きっと上手くいく
返事がない。
でも
きっと
そーゆーこった。
「出てくわ。それが望みだろ」
「和也」
「もう……いい」
またジャケットを乱暴につかみ
俺は千尋から逃げる。
早くここから逃げないと
彼女に酷いセリフを言いそうで怖かった。
それとも
自分が惨めになるくらい
泣いてすがって崩れるかもしれない。
お腹の子供に悪いだろ。
子供には罪はない。
だからさぁ
家賃もろくに入れないで
客をつかむ為に女とホイホイ寝てさぁ
水商売から足を洗えず
お日さまに背く生活してるなんて
まともじゃない。
真面目なお役所勤めのデブなら
千尋も幸せになるだろう。
よかったじゃん。
まだまだ遊び足りないし
ひとりの女に縛られるなんてね
この俺が
フツーの家庭を夢みてたなんて
笑っちゃうよな。
ジャケットを着てあてもなく歩き
信号待ちで近所の店のガラスに映る自分の姿を見る。
髪が黒い……似合わねー。
ポケットにはハローワークでもらった求人票。
もう行く必要もない。