きっと上手くいく

兄を追い出し
また僕はひとり部屋で千尋ちゃんを想う。

大好きな千尋ちゃん。

自分の心の中で
千尋ちゃんに『さようなら』できるのかなぁ。

ベッドの下に手を伸ばし
小さな手提げ金庫を取り出した。
暗証番号を回すと元気に蓋が開く。

その中にあるのは
スナック菓子が入っているような
可愛らしい細長い箱。

10個入りの内容が
ひとつ使って
残り9個。

初めて買った避妊具。
初めて使った。

買ったはいいけど
どこに隠していいのか、わからなくなる。

掃除に入った母親とか
マンガを借りに来た兄が偶然見つけたらと思うと
どうしていいのか、わからなかった。
隠し場所をネットで調べたけど
あまり真似しようという安全な場所もなく。
財布に入れると金運アップって書いてたけど、そんなの怖くて無理。職場で落したらどうしよう。

だから
通販で金庫を買って
使った残りの9個を入れていた。

そっとそれを並べて愛しく見つめる。

ごめんね
もう出番はないかも。
使ってもらった1個はラッキーだったね。


たった1度だけ
千尋ちゃんとエッチできた。

僕は幸せだったよ。

あぁまた涙が止まらない。

いいよ
今夜はとことん泣こう。
覚悟を決めて泣こう。





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