きっと上手くいく
てめーコケにしやがって
許さん!
「顔、上げろやデブ」
俺は土下座するデブが顔を上げたタイミングで、その丸い身体に蹴りを入れようとしていると
「本当にいい加減にして」
千尋の鉄拳が加速しながら俺の腹に入った。
胃液が逆流する。
俺は腹を押さえながらデブの横に転がった。
「和也は仕事に行く時間だよ。健ちゃんも今日は帰って。私の気持ちは伝えたから。ひとりで育てる」
きっぱりと意志のある
迷いのない千尋の声が部屋に響く。
「ひとりって、お前は実家もないから冗談抜きでひとりなんだぞ」
動くと痛てー。今日仕事できるか俺?
「そんなの知ってる。私が一番よく知ってる」
にらみつけるように千尋は俺を見据えた。
覚悟アリアリかよ。
ほんわか天然なヤツだけど
一度言い出したら頑固で自分の考えを曲げない女。
そこにも惚れたんだけど。
「千尋ちゃん」
「健ちゃん、今日はありがとう。まだ話はあると思うけど、今日は疲れちゃったから帰って下さい」
千尋に頭を下げられ
デブは半泣きで『また明日ね』って千尋に言い、俺に冷たい目線を浴びせてから部屋を出て行った。
「和也、遅刻するよ」
「今日休む」
「ダメだよ。先週もおばあちゃんが危篤とか言って休んだじゃない」
千尋はやっと笑顔を見せた。
ほんわかと優しく癒される笑顔だった。