きっと上手くいく

二次会は広いカクテルバーに案内された。

少し早目の忘年会が流行っているのか人が沢山入っていて驚いた。
広いフロアに大きなソファーやテーブルが並び、お洒落な雰囲気の中でそれぞれのグループが輪をなしている。

「三次会はカラオケですから」
後輩に言われて背筋がゾッとする。
三次会までは行かないから。
家で昨日買ったチョコエッグ食べるから帰る。

メニューが回され
おつまみと各自の飲み物を注文し乾杯。
人数が多いので
2つのテーブルに別れて会話。
若く元気のいいグループと静かなおじさんグループ。

僕はもちろん後者。
年令的にはあっちだけど……無理!
課長を探すと
無理やりあちらの若者グループに混ざってる。
きっと息切れしてこちらに来るだろう。
その時は係長に任せよう。

ジンジャーエールを飲みながら一息ついていると

「疲れましたか?」
同じ課の伊藤美奈代さんが僕の隣で話しかけてきた。
あ、伊藤さんの隣だったのか。

「少し疲れました」
正直に僕が言うと
伊藤さんは優しく微笑む。

たしか僕より3つか4つ年上だったかな。
あまり話をした事がない。
僕は伊藤さんのウーロン茶のグラスに氷を入れると「すいません」って恐縮された。
少し重たげな黒髪がまっすぐ背中まで伸び、黒のニットスーツに溶けて混ざるようだ。
色白の顔にスッと涼しげな一重のまなざし。

特に綺麗な人とは言えないけど
品のある静かな落ち着いた人だと思う。

なんて
デブでキモい僕が彼女をそう評価するのは
とっても失礼だよね。



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