きっと上手くいく
「石橋さんお酒は?」
「僕は飲めないんです。伊藤さんは?」
「私も苦手なんです」
そんな会話から始まり
僕達はポツリポツリと言葉を重ねる。
職場のイメージと違って話しやすい女性だった。
「彼女と仲良くしてますか?」
「はい?」
かじっているポッキーを途中で止まらせ伊藤さんを見る。
「ここ何ヶ月かで石橋さん変わった気がしたんです。あ、勝手な意見です。ごめんなさい」
慌てた感じで伊藤さんは早口で言う。
課長が若者のテーブルを離れてこっちに来たので、僕は伊藤さんの方に身体を寄せて課長を遮断した。
「毎日が楽しそうでしたが、最近はちょっと元気がない気がして」
伊藤さんは太い僕が身体を寄せたので圧を感じたのか、目を少し大きくして一歩引く。
驚いた顔が年上だけど可愛らしい
可愛さを比べると
誰よりも千尋ちゃんの方が……ダメな僕。
「あ……フラれたんです」
僕は素直に言葉にする。
こんな素直な告白は初めてかもしれない。
思えばフラれた事は
誰にも言ってなかった。
「そうなんですか」
「はい」
自分で認めると妙に悲しい。
「それは何と言えばいいのか、元気出して下さい。女の子はいっぱいいますよ。石橋さんは真面目で優しいから大丈夫です」
「それはないです。もう女の子はいいです」
二度と女の子とお付き合いする事はないだろう。
ズズンと落ち込んでしまう
すると
「私……立候補しようかな。年上はダメか」
小さな小さな声で伊藤さんは僕にそう言った。
「え?」
互いの胸の鼓動が速くなる。
頬がカーッと熱くなる。
ジンジャーエールとウーロン茶で酔ってる大人が二人いた。