きっと上手くいく

背中に伊藤さんの視線を感じながら
僕は静かに立ち上がり
楽しく会話する男性と女の子の間に移動して入り込んだ。

はぁ?何だよお前
声には出てないけど、男性の心の声はしっかり聞こえた。

近くで見ると
ちょいワル風なイケメンで
僕は虫のように小さくなってしまう。

「あの……ここは僕達のテーブルなので、すいません。あの……」

「はぁあ?意味わかんないんですけど。俺はこっちの女の子達と仲良くなったから話をしてるだけ」
強気に出られて困ってしまう。
女の子達は僕が出て来たから、多少の焦りが見え高校生のようにヤバいって顔をして静かになる。

女の子は冷静だ。
自分が気の向くまま行動をして
空気が悪くなれば理性を戻す。
冷静で賢くて
自分に不利な事はしない。
職場の飲み会では楽しく過ごし
悪評は残さない。

でも男はバカなので
見栄とプライドがあり引っ込みがつかない生き物。

「俺が何をした?お前たちに魅力がないから俺達のとこに来るんじゃない?」

「いや……確かに……でもですね」

「デブのオタクに言われたくないんですけどー」

デブだけど
オタクの知識がないからオタクじゃない。オタクに失礼。

男性の声が大きくなり
僕の横から係長と若いのが何名か出て来そうになるけれど、僕は小さく首を横に振る。

うちの役所の決まりは
こんな時
絶対手を出してはいけない。
穏便に丸く収めなければいけない。

どんなに相手が悪くても
公務員は叩かれる確率が多い。

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