きっと上手くいく
一発殴られてそれで終わるなら
痛いけど我慢しよう。
できればグーじゃなくて
パーで殴って欲しいなぁ。
男性の手が僕の首元に迫った時
「そのデブをいじめていいのは俺だけ」
目の前で男性の手が止まり
聞き覚えのある声が僕の脳内を刺激する。
「何やってんだよデブ」
懐かしむような驚くような
山岸さんはそんな声を出し僕を見つめる。
「ちょっと俺に代わって」
優しい声で僕の前に立つ男性の肩をつかみ引っ張った。
「お前が女の子引っかけるからだぞ。次の店に連れて行ってお持ち帰りするんだろ」
「それ言わないで」
山岸さんは男性の口をふさぎ「ごめんねまたね。じゃあなデブ」少女マンガのように目をハートにしている女の子達に甘い声を出し、僕には冷たい声を出し山岸さんは男性を引っ張って行ってしまった。
「あっちが本命だったのにー」
「絶対カッコいいよね名刺もらった?」
「もらったー。大手の医療器具メーカーだよエリート!」
「石橋さんの知り合いですか?」
迷惑かけたのも忘れ
女の子達が騒いでた。
「ナンパされたの?」さりげなく聞くと女の子達は一斉にうなずく。
ナンパ?どうして?
千尋ちゃんがいるのに
どうしてそんな事をする!
僕がどんな気持ちで彼女をあきらめたのか、わかってるのか!
僕は沢山の人とぶつかりながら
山岸さんの元に走った。