きっと上手くいく

「ふざけんな!」

僕が涙を出す前に
山岸さんの怒鳴り声が僕に響く。
僕はビクリと亀のように首をすくめると

「悪い……もういい」
陸に上がった魚のように
息苦しそうな顔をしてネクタイ緩めて目を閉じる。

「山岸さん」
長い足を速めながら山岸さんは店を出ようとするので、僕は追いかけた。

何か変だ。

「あの……僕……」

「千尋は元気?」

「え?」

その質問も変だ。

「コケたりしてない?お腹は順調?」

「え?」

「まだバイト続けてる?」

「は?」

「お前に鍵を渡せばいいのか。俺、アパートの鍵をまだ持っててさ、郵送で送ろうかと」

「何の話です?」

僕との会話に違和感を感じたのか
山岸さんは僕に近寄り真面目な顔で低い声を僕に出す。

「お前……千尋と付き合ってんだろ」

「付き合ってるわけないでしょう!
 僕は千尋ちゃんにフラれました。
 千尋ちゃんは和也さんが好きなんです」

「はぁ?」

「だから何度も言わせないで下さい」

「だって……お腹の子供はお前の子だぞ」

山岸さんの言葉に僕の頭は真っ白になった。


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