きっと上手くいく

「俺……言われたもん。だから家を出た。お前と一緒になって結婚したもんだと思ってたのに」

「え……でも……でっ……」
膝の後ろを誰かに蹴られたように
僕はガクガクとそのまま床に崩れてしまった。

「『女に慣れてる和也が避妊を失敗するはずがない』って言われた。そーだよな……そこ突かれると痛いわ」
山岸さんは笑って僕の身体を立たせる。
その表情は昔の優しい顔だった。

「千尋を大切にしろ。もちろんお腹の子供もな。お前が必ず幸せにしろ」

まだ身体に力が入らない。

だって
お腹の子供が僕の子だったなんて。

満塁逆転ホームラン。

千尋ちゃんを想う気持ちが身体中を駆け抜ける。
千尋ちゃん……千尋ちゃん
ひとりで心細いだろう。

今……行くよ。

僕が必ず幸せにする。
こんな僕だけど
必ず君とお腹の中の子供を幸せにする。

いつの間にか溢れる涙を袖で拭う。

「もう絶対離すなよ。離したら遠慮なく俺が奪う」

「絶対離れません。絶対幸せにします」
泣きながら山岸さんに言うと「よし」って寂しそうに笑う。

「もう二度と会わないと思うけど。さよなら」

「山岸さん」

「千尋を頼む」
聞こえるか聞こえないような声が震えてた。
寂しく苦しそうに震えてた。

僕は返事をし
しっかり自分の力で立ち
深々と山岸さんに頭を下げる。

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