きっと上手くいく

山岸さんの気配が遠ざかる。

どんな気持ちなんだろう
まだ山岸さんは千尋ちゃんが好きなんだ
それを僕が奪ってしまった。

必ず幸せにします。

顔を上げた時
もう山岸さんの姿はなかった。

行こう
千尋ちゃんのアパートに行こう。

僕は預けていたコートとビジネスバッグを手にして、深呼吸してから店を出てタクシーを拾う。

千尋ちゃんの住所を告げて
シートに身体を埋めて山岸さんとの会話を思い出す。


『女に慣れてる和也が避妊を失敗するはずがない』

たしかにそうだ

そうだけど。

自分の部屋のベッドの下
金庫に残ってる9個のゴム。

唯一使った1個

僕はただ一度だけ
千尋ちゃんを抱いた。

その夜は



 初めてだから


舞い上がって避妊に失敗したのではなく。




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