きっと上手くいく
「でもね本当に営業で寝てたのよ。あなたにこんな話をするのも変だけど、本気の心はどこか別の所にあった。彼は寂しい私みたいな女に、肌を重ねて幸せにしてくれるヤツ。お金があるのが前提だけど」
その時
隙のない女性が少女のように
少し恥ずかしそうな顔をしたのが印象的だった。
「それはいいの。お金だけの関係だから。でも、私の後輩と寝て私を軽んじたのは許さない」
「あの……」
「プライドを傷つけた」
「……すいません」
「どうして貴女が謝るの?もう、変な人」
また笑われてしまった。
本当だ。
私が謝る必要なんてないのに。
うつむいてると
「悔しくてね、最後に寝た時……ちょっとだけ悪い事しちゃった」
「悪い事ですか?」
「彼の持ってたゴムにね……ハサミで切り目を入れた」
「はい?」
意味がわからなかった。
「えーっとね。彼の幸せそうな寝顔を見ていたらムカついて、ホテルのソーイングセットからハサミを取り出して彼のポケットに入ってる避妊具に穴を開けた。アレ使ったらデキるから。気をつけて」
え?
「5個あった。右上にボールペンでナンバリングしてるから、和也が帰って来てからチェックしてみて。他の人に使ったかな……たぶん今月はお客さん足りてるから枕営業してないと思うの。後輩とも縁を切らせたし」
どうしよう
「家ではポケットから出して使わないわよね。もし見つけたら捨てておいて。使わないようにね意味ないから。ごめんなさい。どうしても貴女には伝えたくて。許してね」
その女性はそれだけ言って
スッキリしたように
私の前から去って行った。
言いたいコトだけ言って。
どうしよう。
私はダッシュで家に入る。