恋愛心工事中。



こんな男の子とまともに付き合った事のないあたしが……



こんな甘酸っぱい青春ドラマみたいな事して良いんだろうか?







キイッ





『出発しますよ、お客さん』





タクシー運転手みたいな事を言って、壱はペダルを踏んだ。







駐輪場を抜けて、広い道を走る。





7月でも、夜は少し涼しく、過ごしやすい。




その心地良い風が、あたしの髪を揺らす。

風に運ばれてくる壱の香り。



壱の背中に回した腕。

真っ赤であろう、熱いあたしの顔。

鼓動がいつもの倍早すぎる心臓。





全てが狂い始めて、あたしの胸は高鳴る。







壱という存在が、分からなくなるくらい
呼吸の仕方が、分からなくなるくらい




何もかもが麻痺しておかしくなってしまいそう。








温かい壱の体の温度に、目眩をおこしてしまいそうだった。











『美羽の水泳大会ってさ、』



壱があたしに話しかけた。






『8月のいつ?』

「えっと…8日!」



『どこでやんの?』

「隣町の施設!」

『あー、あのでっかい所か!』





普通に会話していることが、何だか妙だった。





つい最近までコイツが嫌いで。
近づきたくもなかったというのに。






今は………何故だろう。






こんなにもコイツの事で頭が一杯だ。








< 107 / 440 >

この作品をシェア

pagetop