恋愛心工事中。
こんな男の子とまともに付き合った事のないあたしが……
こんな甘酸っぱい青春ドラマみたいな事して良いんだろうか?
キイッ
『出発しますよ、お客さん』
タクシー運転手みたいな事を言って、壱はペダルを踏んだ。
駐輪場を抜けて、広い道を走る。
7月でも、夜は少し涼しく、過ごしやすい。
その心地良い風が、あたしの髪を揺らす。
風に運ばれてくる壱の香り。
壱の背中に回した腕。
真っ赤であろう、熱いあたしの顔。
鼓動がいつもの倍早すぎる心臓。
全てが狂い始めて、あたしの胸は高鳴る。
壱という存在が、分からなくなるくらい
呼吸の仕方が、分からなくなるくらい
何もかもが麻痺しておかしくなってしまいそう。
温かい壱の体の温度に、目眩をおこしてしまいそうだった。
『美羽の水泳大会ってさ、』
壱があたしに話しかけた。
『8月のいつ?』
「えっと…8日!」
『どこでやんの?』
「隣町の施設!」
『あー、あのでっかい所か!』
普通に会話していることが、何だか妙だった。
つい最近までコイツが嫌いで。
近づきたくもなかったというのに。
今は………何故だろう。
こんなにもコイツの事で頭が一杯だ。