恋愛心工事中。


頭に何も入らないまま、お昼の時間になった。


ずっと握り拳を作っていたため、微かに汗ばむ手のひら。




あたしは、隣の珍しく何も話さない壱を横目で見た。







「有美ぃ…屋上、行かない?」


あたしは有美に尋ねてみた。





『あっ、うん!!
そだね!!』


有美は急いでお弁当を出した。





『じゃ、行こ!』

有美は笑顔であたしを見た。




その笑顔に、心が少し軽くなった。








―屋上


7月の今。

太陽が照りつける季節だが、屋上には日陰のスペースがあった。



そこでまどろみながら雑談。

それが好きだった。








『はいっ、あげる』


有美はあたしに、牛乳を差し出した。




「ありがとっ」


お弁当を広げて、空の下で食事。






「いくらだった?」


あたしは牛乳を持ち有美を見た。





『いいよ。出血大サービス。今日はそれ、あたしの奢り』


「牛乳一本で出血大サービスなの?」



『あんた、その毒舌どうにかしなさい』






いつもみたいな、会話。

いつもみたいな、風景。



変わらない、空。





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