恋愛心工事中。


『…………美羽』


壱がふと呟く



壱がまだ、あたしのこと
美羽って呼んでくれて

胸がジンワリと
熱くなった





「どうしたの…?」

やっと口から出た言葉が
何だか情けない





『言ったろ。
ここにくれば何もかもが忘れられるって』



壱が寂しげに
静かに微笑んだ




その笑顔は
壱の本当の笑顔じゃないようだった

だから尚更
泣きそうになってくる





「何か…夜じゃないと…雰囲気が違うね」


壱と見た
宝石みたいな景色も良かったけど

この昼に見る景色も
初めて壱と見た





『美羽は?
何で居んの?』


佐々木君に呼び出された時とは別人かのように、壱は優しい口調だった。





「…何となく」


薄く笑うと
笑い返してくれた





< 306 / 440 >

この作品をシェア

pagetop