恋愛心工事中。


ガラガラッ

扉の開く音がして、その方向を見ると、担任の政え先生が居た。




『えー、おはよう』

今だにザワザワする中、政え先生は挨拶をした。



『今日は皆に大事な話があります。えー、よく聞いて下さい』


口癖は相変わらずだが、政え先生の表情は真剣だった。




「…………」

壱の話だ…………



体が震える。

どうしても信じられなかった話が、もっと鮮明に、目に見えてくる。




隣に居ない壱が、
本当に居なくなる…





『入って』

政え先生は扉の方を見て、静かに言った。



生徒達のざわめきは、少しずつ収まっていく。





ゆっくりと中に入ってきたのは、やはり壱だった。




胸が、何かに貫かれたように痛む。

壱の表情は堅かった。





生徒達が何だろうと身を乗り出した。

教室の後ろの席に座る壱が、今、教室の前で…皆の前で立っている。



有美も何事だろう、と顔を上げて注目していた。


< 328 / 440 >

この作品をシェア

pagetop