恋愛心工事中。
壱はそう微笑んで
立ち上がり
屋上の出口へ向かった
動けずに固まるあたしを
振り返ることも無く
立ち去っていく
「………壱…っ」
壱を呼んでも
かすれ声しか出ない
振り向かない壱
離れる距離
「………っ」
昨日で最後って
決めたのに
強くなりたいって
思ったのに
動き出そうとする自分の体を必死に抑えつける。
ダメ、ダメ、ダメ
ダメ、ダメ、ダメ!!!
本当は壱にすがりついて
行かないでって
泣きわめきたい
そしたらどんなに
楽になるか
だけど
そんなことしたら
壱が苦しむ
お父さんの一大事なのに
壱が悩んでしまう
だから
出来ない
壱の前では
もう泣けない
頬を伝う涙が
太陽の光で乾いていく
それでも涙は止まらない
もう、ダメなんだ
あたしは壱と
一緒に居られない
「……はぁっはぁっ」
涙が痛いよ