恋愛心工事中。
屋上を出る扉を開けた壱
その背中は
もう見えなくなる
「……ダメ…っ」
自分の気持ちを
抑えつける
今すぐ壱の背中に
抱きついてしまいたい
だけどダメだから
それは壱を傷つけるから
「い、ち……っ」
涙で歪んだ視界で
壱はそっと扉を閉めた
屋上は
あたし、1人。
夏だと言うのに
蝉も居ない
静かな空間に
1人佇んだ
これは別れだと
教えてくれているようだった
壱は水泳部に
来ないかもしれない
その方が良い
来たら
また泣いてしまう
もう嫌なのに
こんな弱い自分は
壱だって
いや、壱の方が
苦しんでるのに……
あたしは何て
バカなんだろう
壱を本当に想ってるなら
壱を笑顔で
送り出すべきだ
だけど出来ない
今のあたしじゃ……
皆がせっかく
支えてくれたのに
あたしのせいで
ハッキリ出来なかった
少しでも壱と
一緒に居たかった
だから曖昧にした
それが皆を、壱を
傷つけていたなんて
バカなあたしには
分からなかった