何度でも、伝える愛の言葉。
『ごめん、待った?』
スタジオのドアが開いて樹季くんが顔を出す。
「ううん、大丈夫。」
『あいつらは?』
「さっき帰ったよ。」
急用を思い出した!と言って慌ただしくスタジオを出て行ったけれど、本当は私と樹季くんが2人で話せる為の気遣いだってことは分かってる。
昨日樹季くんは、私と先生が話しているところを見ている。
ずっと話せないままでいたスクールを辞めた理由を、ちゃんと話さなければいけない。
『澪と話したいことがあるんだ。』
樹季くんは誠ちゃんのドラム用の椅子を持ってきて、私の隣に座った。
「うん、分かってる。昨日の人のことでしょう?」
『えっ…そうだけど…。』
サラっと言った私に樹季くんは一瞬驚いた顔をして、その後心配そうに私を見た。
昨日、私は樹季くんを置いて先生の後を追った。
あんな姿を見られて、何事もなかったように振る舞う器用さは私にはない。