何度でも、伝える愛の言葉。
『今、ピアノ辞めてなくて良かったって思えてる…?』
「樹季くん、どうしたの?」
私よりもずっと苦しそうで、今にも泣き出しそうな顔をしている樹季くんに戸惑ってしまう。
『澪のピアノを聴くことで救われる人が居るから、これからも弾き続けてほしい。』
「樹季くん…。」
切実なその表情に胸が詰まる。
この人は、本当にそう思ってくれている。
前向きな励ましの言葉を並べただけではない心からの気持ちが、私の心の奥に落ちていく。
「樹季くん、私ね…。」
話さなければいけない。
この人には、全てを知っていてほしい。
何かに突き動かされるように、私はスクールを辞めた理由とピアノを辞めようとしていた理由を話した。
先生と離れて以来、どこにもぶつけることのできなかった気持ちを樹季くんに受け止めてもらいたかった。