何度でも、伝える愛の言葉。

『ありがとう、話してくれて。
澪の口から聞けて良かった。』


話し終えたとき、樹季くんがそっと私の頭を撫でてくれた。

近くなった距離で見る樹季くんも相変わらず苦しそうで、私の目から涙が落ちた。



「樹季くん。
いろいろあったけど、私もう大丈夫だよ?先生のことも忘れる。」

『本当にそれで良いのか…?』

「だって、ただ遊ばれただけなんだから。
皆に出会えて一緒にバンドができて私は今すごく楽しいし、ピアノ辞めてなくて良かったって思ってるよ。」


ひとつひとつの言葉をちゃんと届けたくて、でも本当に届いているのか不安で。

樹季くんならきっと、こんなときは歌って人の心に届けられるんだろうな。



『澪、好きだ。』

「えっ?」


そんなことを考えていたら、樹季くんの声を聞き逃してしまいそうになった。


今、なんて言ったの…?



< 111 / 276 >

この作品をシェア

pagetop