何度でも、伝える愛の言葉。

だけど私は知ってる。

樹季くんは、何があっても音楽を放さない。


1度決めたことを、1度抱いた想いを、簡単に手放したりなどしない。



「本当に…?」

『本当に。』


だから、この人なら信用できる。

そう思った。



「私、不安になってる。早坂先生のことがあって、どうせ皆すぐにどこかに行っちゃうんだ…って。正直に言うとね、樹季くんに対しても思ってた。」

『澪…。』

「でも樹季くんは、樹季くんだけは信頼できる。」


この人がずっと傍に居てくれたら。

早坂先生のことだってきっとすぐに忘れられて、また新たな思い出に塗り替えられて行く。



「樹季くんと、一緒に居たい。」


言い終わるよりも先に、私は樹季くんに抱き寄せられていた。

温かい胸の中。


この腕に守られていれば、きっと私は大丈夫。

樹季くんにも、そう思ってもらいたい。


私はそっと樹季くんの背中に腕を回した。



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