何度でも、伝える愛の言葉。
◆第三章◆
【悠斗 Side】
季節は夏から秋へと変わろうとしている。
樹季と澪が付き合い始めたり、澪も曲を1人で書けるようになったりと変化は多い。
その変化がバンドに良い流れを運んでいるのか、最近はライブの集客も良くなってきている。
『通過?』
その電話を受けたのは、自宅で曲作りをしているときだった。
『三次審査までにもう1曲新曲を作ってください。それを通過しますとライブ形式の最終審査に移ります。』
真っ白になった頭を慌てて働かせてメモをとる。
「通過…。」
電話を終えて改めてメモを見ると急に実感が湧いてきた。
有名レコード会社が主催する、若手バンドを対象としたオーディションの二次審査の結果を知らせる電話だった。
このオーディションの為に俺たちが作った曲が、二次審査を通過したという。
これまでオーディションは何度も受けてきたが、だいたいが二次審査止まりだった。
それがここに来て初の二次審査通過。
もっと素直に喜んでも良いはずなのに、戸惑いを感じているのはなぜだろう。