何度でも、伝える愛の言葉。

このオーディションは現在フェスやロックシーンで活躍するバンドを多数輩出しており、若手バンドの登竜門とも呼ばれている。

グランプリを獲れば主催するレーベルからメジャーデビューが決定する。

グランプリを獲れなかったとしても、そのオーディションを勝ち進んだことで知名度も上がりファンも増える。

今の俺たちにとって願ってもないことだ。


なのに……


俺は二次審査を通過した楽曲に1人戸惑っている。



俺が灯里に向けて書いた曲だったからだ。



『おつかれーっす。』

『うぃーす。』


手の中の携帯を眺めながらぼうっとしているとメンバーが4人揃ってやって来た。



「なぁ、」

『ん?』

「俺らの曲さ、二次通過したって。三次までに新曲…」

『うぉぉっしゃーーー!!』


最後まで言い終わらないうちに、誠太が雄叫びをあげる。

他のメンバーもそれで察知したらしく、ハイタッチをして喜んでいる。



『おお悠斗!やったなー!…って、どうしたんだよ。』


俺とハイタッチをしようとして手を伸ばした樹季が、俺の冴えない顔に気付いて手を引っ込める。



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