何度でも、伝える愛の言葉。

『すっげぇなー。』

『いや、そんな…。』


恐らく無意識に漏れたであろう樹季の呟きに、澪が謙遜する。



「俺らの曲、弾ける?」

『えっ?』


もしかしたら…。

そんな期待を込めて澪に楽譜を渡す。



『弾ける…と思います。』


それを受け取った澪が譜面台に楽譜を並べ、鍵盤に手を置く。



『一応言っとくけど、俺らの前で緊張とかそういうの要らないからな。』


不安そうな澪に樹季が声をかける。

その言葉に澪はふっと表情を緩め、指を動かした。


やっぱり…。

この子、初見に強いタイプだ。



『俺らの曲、悪くねぇじゃん。』


美しい音色を聴きながら悟が言う。



「だな。」

『育てれば曲も作れるようになるかもしれない。』

「なるよ、絶対。」


そんな会話をしていると、澪が手を止めた。



『とりあえず、ここまでなら…。』

『いやーすごいなぁ澪ちゃん。俺なんかなかなか譜面覚えらんなくてさー!』


澪は心配そうに俺たちのリアクションを窺っていたけれど、誠太の言葉を聞いて安心したように笑う。



「ありがとう。正直、初見でここまで弾いてくれると思わなかった。改めて、これからよろしく。」

『あっ、いえ…こちらこそ。』


澪は俺に向かってペコっと頭を下げると宝物を見るような目でキーボードを見た。


その視線が少し上がり樹季の視線とぶつかったとき、2人は目で頷き合った。



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