何度でも、伝える愛の言葉。

『会いたいって思っちゃった…どうしても会いたいって。忘れることなんて、できるわけないね。』


最後の方はほとんど涙で声になっていなかった。

灯里の後悔が痛い程伝わってくる。


後悔。


灯里が自分のことをからっぽだと思いつめていたとき、その悩みに俺は気付けなかった。

誰にも何も言わず、そっと東京を離れた彼女と同じだけの後悔が今俺の心を締め付ける。



『ラジオで流れてた曲…さっき歌ってた、このオーディションの最終審査に残ってる曲…あれって、悠くんが作ったの?』

「そうだよ。」


俺が1番気付いてほしかったこと。

彼女へ向けて書いた大切な歌。



『あの曲聴いて、会いに来て良かったって思った。私の勘違いじゃなければ…。』

「勘違いなんかじゃないよ。俺は灯里に向けてあの歌を書いた。
会いにきてくれて、本当にありがとう。」


届いた、と思った。

どこに居るかも分からない彼女へ向けて放った歌が、同じ空の下に居た彼女に確かに届いていた。


俺はもう1度、その身体をそっと抱き寄せた。



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