何度でも、伝える愛の言葉。

ついさっきライブで歌ったばかりのその曲を灯里が口ずさむ。

俺たちは手を繋ぎ合ったままベンチに並んで座っていた。



『ラジオで聴いたときから、この歌がずっと頭から離れなかった。今までのRefrainにはなかった曲調だったから余計にかな。』

「やっぱりバンドのことよく分かってくれてるな、灯里は。」


この歌をバンドで歌うことの覚悟と挑戦を、灯里はきっと初めて聴いたそのときに感じ取ってくれたのだろう。



『ありがとう、歌ってくれて。』

「灯里への歌を書いてみたらって言ってくれたメンバーがいるんだ。
俺は自分の勝手でメンバーを傷付けてしまったけど、そう言ってもらえて俺も救われたんだ。」


灯里と澪は違うと気付かせてくれた樹季。

実体験を歌詞にしても重くなんかならないと言ってくれた澪。

この歌のために最高の曲を作ってくれた悟。

バンドの空気を察していつも明るく振舞ってくれていた誠太。


メンバーが居なかったら、今灯里と一緒に居る俺は居なかっただろう。


心の底から湧き上がってくる感謝の気持ちと、灯里が隣に居ることの幸せを噛み締めていた。



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