何度でも、伝える愛の言葉。
『お前らいつも言うよな?オーディション落ちてもまだまだこっからだって。でもさ、もっと落ちたこと受け止めて考えるべきだろ。』
誠太の言葉に誰も何も言い返せず、重苦しい空気だけが漂う。
『何の根拠もないのにデビューできると思い込んで、兄貴がスタジオ貸してくれる環境に甘えて、ライブもオーディションも全然結果出せねぇのに「次だ次だ」って向き合おうともしない。俺ら本当にこんなんで良いのかよ?』
言い返せるはずがない。
まっすぐな正論をぶつけられて。
誠太の言う通りだ。
今すぐじゃなくてもいつかはデビューできるだろうし、自分たちの曲だって最高に格好良い、そう思い込んでいた。
『何の苦労もせずにデビューなんてできないと思う、俺は。』
水を打ったように静かなスタジオ。
今俺たちが居るこのスタジオも、誠太のお兄さんが貸してくれている物であって自分たちで手にした物ではない。
同じようにデビューを目指すバンドは、きっとスタジオを借りるのにも苦労しているはずだ。
俺たちが居る環境は、甘い。