何度でも、伝える愛の言葉。
嫉妬しているのかと聞かれれば、している。
どんな人にも別け隔てなく軽く接することができる樹季に。
言い方を変えればチャラいだけなのかもしれない。
それでも今の澪に対しては、その軽さとチャラさがちょうど良いはずだ。
『悠斗、なんか走ってねぇか?』
そんなことを考えながら弾いていると、悟が手を止めて言った。
何やってんだ、俺…。
「悪りぃ。もう1回頭から演らせて。」
『頼むぜリーダー。澪が入ってテンション上がってんじゃねぇの?』
「黙れ。」
冗談ぽく言う悟の言葉に澪も笑っている。
それで良い。
笑っていてくれれば、それで…。
5人になって初めての音合わせは比較的上手くいったと思う。
澪のピアノもバンドに馴染むし、アレンジの幅も広がりそうだ。
『楽しかったろ?』
『はい、楽しかったです。』
『敬語禁止。』
ベースを片付けながら、樹季と澪のやりとりを視線の端で捉える。
澪が楽しんでくれたのなら何よりだ。
だけど、楽しそうに樹季と話す姿はあまり見たくなかった。
樹季が澪のことをただのメンバーとしてしか見ていなかったとしても、もし澪が樹季を好きになったら…。
そんな先のことを考え、自分が決めた“バンド内恋愛禁止”を自分で破ってしまうのではないかと不安になった。
澪が入らなければ良かったなんて思ったことは1度もない。
キーボードを探して澪を誘ったことも、後悔していない。
澪しか居なかったと思う。
澪じゃなきゃダメだったと思う。
じゃあ、どうして俺たちは…。