何度でも、伝える愛の言葉。
二つの想い
【樹季 Side】
「なぁ、早坂先生ってどんな人?」
練習後のスタジオ。
後片付けをしながら悟に聞く。
澪は遅くなるからと先に帰らせたから、スタジオに居るのは見慣れたメンバーだ。
『早坂先生?普通だけど。』
早坂先生とは、悟が通うスクールの先生だ。
初めて名前を聞いて、澪を勧めていると知ったときからずっと気になっていた。
「普通って?」
『音楽センスは間違いなく抜群。それに熱心だし頼れるし、生徒のことちゃんと考えてくれてるし。年も近いからお兄ちゃんみたいな存在かな。』
「え、早坂先生ってそんな若いの?」
『えーっと、確か20?21?…そんくらい。』
「若っ。」
勝手にもう少し年上だと思ってたいたから、その若さは意外だった。
『なんか中学んときからバンドのギターやってて、デビュー近かったらしいけどメンバーと揉めて話流れたって噂。』
『へぇー。モテてただろうなぁ。』
誠太の着眼点は音楽から少しズレている。
デビューが近かった…か。
俺らにもそんな日が来るのだろうか。
『いやぁーモテてたらしいよ。てかそこは現在進行形。早坂先生目当てでスクール通ってるような奴も普通に居るしな。』
『へぇ〜すっげぇ。やっぱギターってモテんのかな?』
悟と誠太が繰り広げるそんな呑気な会話を、全然呑気じゃない気分で俺は聞いていた。