何度でも、伝える愛の言葉。

ずっとスクールに通っている悟くんだから、私と先生の噂だって耳に入っているだろう。

気を遣わせてしまっていることに申し訳なさを感じ、それと同時にどうして先生は私を勧めたりしたのだろうと、もう何度も思ったことをまた思う。

スクールで接していて、私と悟くんが同じ高校に通っていることは把握していただろう。

でもだからって、私じゃなければいけない理由なんてないはずだ。


あの日。

ライブの後で私に声をかけてくれたあの日に、私はもう本当に先生を忘れると決めた。

この人は酷い人だと、思おうとした。


だから、今は私にバンドを教えてくれたことを感謝していても、もう「ありがとう」と伝えることもできない。



『ごめんな、変な話して。』


黙ってしまった私に悟くんが謝る。



「ううん、私の方こそごめん。気遣わせちゃってるよね。」

『…俺は、2人とも好きだから。』


私と先生の噂を聞いていたのだとしたら、私がスクールを辞めた理由も察しているかもしれない。

それでも先生のことを好きだと言ってくれることに安心している自分がいる。


悟くん1人挟めばすぐに繋がることができる距離が、こんなにも遠い。


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