何度でも、伝える愛の言葉。

「ねぇ、悟くん。前に話してくれた、先生が私をバンドに勧めた理由って本当?」


知りたい、と思う気持ちが躊躇を超える。

悟くんが言ってくれた言葉の中には、まだ先生の優しさが残っていた。



『え、本当だけど…どうした?』


この子のピアノ聴きたい人いるから、ここに。

あの日の先生の言葉が過ぎる。



「なんでだろうね。」

『え?』


なんでだろう。

あんな風に終わったのに、好きじゃなかったってはっきり言われたのに、なんでこんなにも好きな気持ちを思い出してしまうの。

どうしてまた“良基さん”と呼びたいと思ってしまうの。



『澪。』


その場に立ち尽くして涙を堪える私を悟くんが真剣な声で呼ぶ。



『澪は、樹季のことが好きなんだよな…?』


切実に問いかける悟くんの声が私の心を刺す。



「好きだよ。」


そう答えた瞬間、涙が落ちた。



「好き、本当に好き。」


2人の間をただ時間だけが過ぎて行く。


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