何度でも、伝える愛の言葉。

「え?」


遠山くん…遠山くん…誠ちゃんのことじゃ、ないよね…?



『遠山くんって、兄貴のことですか?』


誠ちゃんの声が少し震えている気がした。



『え?そうだけど。聞いてないの?』

『何を、ですか?』

『弟がやってるバンドがデビュー目指して頑張ってるから、1度ライブ観に行って考えてやってくれないかって。』


笑顔で溢れていた皆の顔が、少しずつ強張っていく。



『遠山くんはうちのアーティストによくついてもらってるし、その実力は誰もが認めてるから。
その弟が入ってるバンドなら1度観に行っても損はないだろうと思ってね。』

『うん、期待通りだったよ。』


顔を見合わせて頷き合う2人を、ただ無言で見つめることしかできない。



『そう、だったんだ。』


誠ちゃんの声だけが響く。


この前のオーディションに落ちた後、皆で自分たちの現状について話し合った。

そこで出たのは、ライブもスタジオもどれも誠ちゃんのお兄さんに用意してもらったものばかりだということ。


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