何度でも、伝える愛の言葉。
「誠ちゃんが謝ることじゃないよ。」
『そうだよ。気にするな。』
『でも、俺が先に兄貴に聞いてればこのライブも受けなかっただろ。』
また沈黙が訪れる。
誠ちゃんのお兄さんが用意してくれたライブで、誠ちゃんのお兄さんが気を回してくれたデビューの話だと知っていたら。
私たちはこの話を受けただろうか。
あんなにも喜び勇んで練習に励んだだろうか。
『それは…』
樹季くんの答えの先を誰も継げない。
その現実に1番向き合い、1番葛藤していたのは誠ちゃんで。
ようやく自分たちの力で掴んだと思っていたチャンスがお兄さんからのアシストだったと知った今、1番複雑な想いを抱えているのも誠ちゃんだ。
そんな誠ちゃんにかけてあげる言葉を、4人も居るのに私たちは誰も持ち合わせていなかった。
『ごめん。』
誠ちゃんの2度目の謝罪にも何も答えられない私たちは、きっと皆が自分で自分を責めている。
だけど誠ちゃんはそれ以上に自分を責めているであろう事実が、ただただ辛くて悲しい。