何度でも、伝える愛の言葉。

翌日、フラっとスタジオへ寄ったら鍵が開いていた。

他にも授業サボってスタジオ来てるメンバーが居るのかと思って中に入ると、澪がキーボードの前に座っていた。



「…ビックリした。」

『えっ?樹季さん?』

「樹季で良いって言ったろ。』

『じゃあ、樹季…くん。』


思いもしなかったメンバーの登場に驚いているのはお互い様のようだ。



『あ、あの、学校は…?』

「聞くと思った。サボりだよ。どうせ俺進学しないから受験もねぇし。」

『そうなんですか。』


まだ取れない会話のぎこちなさと敬語が見えない壁を作っているような気がした。



「鍵、どうしたの?」

『あ、悠斗さんが朝開けに来てくれたんです。別のキーボードも運びたくて。』

「悠斗が?」


ここの鍵は悠斗と悟が持っている。

悟は昼間のバイトに向けて朝はだいたい爆睡しているから、悠斗が学校へ行く前に開けたんだろう。

別に、澪が悠斗と連絡を取り合っていたって、メンバー同士なんだから当たり前だし…。

って、明らかに強がりだけど。

内心は、悔しかった。


ここの鍵を持っているのが悠斗と悟だということを澪はまだ知らない。

そして俺は今日澪がキーボードを運ぶということを知らなかった。

澪は、俺より先に悠斗に連絡してたってことだよな。



「なぁ、澪。」

『はい。』

「…弾ける?俺らの曲。」


俺たちが作っている曲。

俺が歌ってる曲。

それを澪のピアノで聴きたかった。


< 19 / 276 >

この作品をシェア

pagetop