何度でも、伝える愛の言葉。

『俺は、誠太の兄貴が出してくれるライブだから出てた。』


しんと静まり返った部屋で、誰も受け止めなかった言葉が落ちて行く。

誠ちゃんのお兄さんが出してくれるライブだから…

それって、つまり…



『…誠太の兄貴が有名なギタリストだから誠太とバンド組んでたって言いたいのか。』


口にした樹季くんの声は震えていた。



『ずっと言えなかったけど…俺は誠太の兄貴が居ればデビューできると思って、それで。
だからさっきの話聞いたときも、ついに来たって思った。なのに誠太が…』

『俺も嫌だよ。』


黙って聞いていた悠くんが悟くんの声を遮る。



『俺も、できれば自分たちの力でデビューしたい。』

『なんでそこにこだわる?こんな近道があんのに。』

「近道って…」


誠ちゃんと一緒にバンドをしてきたのは、デビューへの近道を通る為?

一緒に音楽をすることが好きだから、楽しいからじゃないの?

誠ちゃんのことが好きだからじゃないの?


そんなの…誠ちゃんの気持ちはどこへ行くの?



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