何度でも、伝える愛の言葉。

『お前には分からないよ。』

「え…?」


一瞬、誰の声なのか分からなかった。

それくらい冷たく硬い声だった。



『悟、やめろ。』

『お前には分からないって言ってんだよ。俺がどんな気持ちで音楽やってるか。…お前には絶対分からない。』

『悟!』


悟くんを止める樹季くんの声も悠くんの声も上手く聞き取ることができなかったのに、悟くんの言葉だけは正確に耳が拾う。



『俺は本当に、本当に本気でデビューしたいし、一生音楽で食って行きたい。だからスクール通って必死で勉強して曲作って。』

「私だって…」

『私だって何だよ。』

『悟、もういいだろ。』


私だって、何と言おうとしたのだろう。

誰よりも真摯にバンドと音楽に向き合う悟くんを見てきた。

私だって同じように必死にやってきたとでも言えると思ったのか。



『お前が入ってからバンドが温いんだよ。』


あまりにも真っ直ぐに突き付けられた言葉に、何も答えられなかった。

ただ胸の真ん中に、深く深く刺さって息ができない。


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